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わきが(腋臭症):しくみ、遺伝と耳あか、セルフケアから保険の手術・自由診療まで

わきのにおいが強い体質を、医学では「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼びます。わきがのにおいそのものが健康に害を与えるわけではないです(Nakanoほか, 2009)。それでも本人が困っている場合は、セルフケアから医療機関での治療まで、段階に応じた方法があります。この記事では、しくみと遺伝、制汗剤・デオドラントの使い方、保険が使える手術と自由診療の機器による治療の違い、受診先を説明します。

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  • わきがのしくみと、耳あかのタイプ・遺伝との関係
  • 制汗剤・デオドラントの選び方と使い方、わき毛の処理
  • 保険が使える手術と、自由診療の機器による治療の効果・リスク・費用の幅
  • 受診先と、においを気にしすぎてしまうときの相談先

わきが(腋臭症)とは

汗を出す腺には、全身にあるエクリン腺と、わきの下や陰部にあるアポクリン腺があります。日本皮膚科学会の解説では、わきがのにおいは、アポクリン腺の汗に含まれる脂肪酸が皮ふの表面の細菌に分解されてできるとされています。わきがの人はアポクリン腺が大きく、数も多く、分泌量が多い傾向があります(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」)。

アポクリン腺は思春期に性ホルモンの影響で働きが活発になるため、わきがも思春期以降に目立つようになります。日本人でわきががある人の割合は約10%とされています(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」)。汗とにおいのしくみ全体は、別の記事で詳しく説明しています。

なお、わきの汗が多い「腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」は、わきがとは別の病気です。

遺伝と耳あかのタイプ

耳あかには、湿っていてあめ色の「湿ったタイプ」と、カサカサした「乾いたタイプ」があります。耳の穴にもアポクリン腺の仲間があるため、昔からわきがと耳あかのタイプには関係があると言われてきました。

日本皮膚科学会も、わきがは顕性(優性)遺伝で、親子ともに現れることが多いと説明しています。ただし、湿った耳あかの人がみなわきがになるわけではないです。研究グループは、耳あかが乾いたタイプの型の人がわきがの手術を希望した場合、手術が適さない可能性があるとも述べています(Nakanoほか, 2009)。

セルフケア:洗う・制汗剤とデオドラント

においは「汗や皮脂などの分泌物」と「細菌」がそろってできます。大学病院の形成外科は、こまめなシャワー、入浴時の薬用せっけん、制汗剤は清潔な状態で使うこと、天然素材の衣類などを勧めています(日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科)。

製品を選ぶときは、区分を確かめましょう。わき用の医薬部外品(「薬用」と表示されることが多い)が承認されている効能は「わきが(腋臭)」「皮膚汗臭」「制汗」の範囲です(枚方市「医薬部外品の効能または効果の範囲」)。化粧品のデオドラントは「芳香を与える」など化粧品の効能の範囲にとどまります(厚生労働省, 2011)。制汗剤は汗の量を減らし、デオドラントはにおいを目立たなくするもので、働きが違います(MSDマニュアル, 2024)。

日本皮膚科学会の多汗症の診療ガイドラインでは、塩化アルミニウムを塗る方法が、わきの多汗に有効な治療とされています。副作用として、かぶれなど皮ふの刺激が出ることがあり、使用を休む、炎症を抑える塗り薬を使うなどで対処します(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」)。

制汗剤やデオドラントは、傷やはれ、湿疹があるところや、むだ毛の処理の直後には使わないようにしましょう。赤み、かゆみ、刺激などが出たら使うのをやめ、皮膚科で相談しましょう。

わき毛の処理

医師向けの解説書では、わき毛をそることが、においを抑える助けになる可能性があるとされていますが、効果を確かめたデータは少ないとも書かれています(MSDマニュアル, 2024)。

医療機関での脱毛については、別の記事で詳しく説明しています。

医療での治療:保険が使える手術

医師が腋臭症と診断した場合、わきのアポクリン腺を取り除く手術は健康保険の対象になります(日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科)。代表的な方法が「皮弁法(剪除法)」です。

費用の目安として、国が定める手術の点数は、皮弁法が6,870点(1点10円)です。3割負担なら手術料だけで約2万1千円になり、これに診察、検査、麻酔、処置などの費用が加わります。左右両方を手術すると、総額はさらに増えます(診療報酬点数表 K008, 令和8年度)。

自由診療の機器による治療

切らずに、マイクロ波などで皮ふの下の汗腺を熱で壊す機器による治療もあります。マイクロ波の機器は、日本では2018年に「腋窩多汗症」の治療機器として承認を受けており、腋臭症にも使われています。保険は使えず、自由診療です(百澤ほか, 2023)。

保険の手術は傷あとが残る代わりに汗腺を目で見て取り除けます。機器は傷が小さい代わりに費用が高く、熱による合併症があります。説明を聞いて比べましょう。

受診先と、受診前に知っておきたいこと

わきがの相談は、皮膚科か形成外科で受けられます。汗の量も多い場合は、皮膚科で多汗症の治療(塗り薬、注射など。一部は保険が使える)を先に試す方法もあります(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」)。

わきがはにおいを数値で測る決まった方法がなく、医師が問診や、わきにはさんだガーゼのにおいなどで判断します(日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科)。受診前に、次の点をメモしておくと話が進みやすくなります。

  1. においが気になり始めた時期
  2. 家族に同じ悩みの人がいるか、耳あかが湿っているか
  3. 他人ににおいを指摘されたことがあるか

受診の目安:制汗剤などのセルフケアを続けても、服に黄ばみがつくほどの汗やにおいで仕事や人づきあいに困っている場合は、皮膚科か形成外科を受診しましょう。自由診療を受ける前には、効果、リスク、再治療の可能性、総額を書面で確認しましょう。

においを気にしすぎてしまうとき

においが強くないのに、においのことが頭から離れず、何度もシャワーを浴びる、人を避けるといった状態になる人もいます。

精神医学では、自分の体から他人を不快にさせるにおいが出ているという考えにとらわれ、においをかいで確かめる、過剰にシャワーを浴びるといった行動をくり返す状態を「自己臭関係付け症」と呼び、世界保健機関の新しい病気の分類(ICD-11)に独立した病気として加えられました。日本では「自己臭恐怖」として知られてきたものです(松永, 2022)。

大学病院の形成外科も、自己臭症などの「気にしすぎ」の場合があると説明しています(日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科)。この場合、手術でにおいの悩みが軽くなるとは限らないです。次のような相談先があります。

最終確認日:2026年9月30日

参考にした資料