強壮系の健康食品の危険:医薬品成分の混入・個人輸入・薬との飲み合わせ
「自然の素材だから安心」とうたう強壮系の健康食品から、表示されていない医薬品の成分が見つかる例が、国や自治体の調査でくり返し報告されています。気づかないうちに薬を飲んでいるのと同じ状態になり、持病の薬と重なると命にかかわることもあります。この記事では、国と東京都の調査結果、個人輸入の危険、薬との飲み合わせ、体調が悪くなったときの相談先を説明します。
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- 強壮系の健康食品から医薬品成分が見つかった、国と東京都の調査結果
- 表示にない医薬品成分が危ない理由と、特に危険な薬との飲み合わせ
- 海外からの個人輸入で気をつけること、危ない製品の目印
- 体調が悪くなったときの受診先と相談先(保健所、消費者ホットライン188)
国の買い上げ調査で見つかった医薬品成分
厚生労働省は、運営者の所在地が海外にある、または所在地が分からないインターネットサイトで日本向けに売られている製品を買い上げ、成分を分析しています。強壮をうたう健康食品の結果は次のとおりです。
- 2019年12月〜2020年3月の調査:強壮系11製品のうち4製品から医薬品成分を検出。1製品からは、国内で承認されている医薬品の最大用量の約3倍にあたるED治療薬の成分が見つかった(厚生労働省, 2021/国立健康・栄養研究所, 2021)
- 2023年7〜9月の調査:強壮系29製品のうち9製品から、ED治療薬の成分やそれに似た構造の成分などを検出(厚生労働省「令和5年度インターネット販売製品の買上調査」)
- 2024年8〜9月の調査:強壮系10製品のうち1製品から、ED治療薬の成分を検出(厚生労働省, 2026)
国内の店舗やサイトで売られている製品を36道府県と調べた調査(2021年7月〜2023年4月)でも、強壮系113製品のうち3製品から、皮膚の感覚をまひさせる局所麻酔薬の成分が見つかっています(厚生労働省「令和3年度無承認無許可医薬品等買上調査」)。
東京都の調査でも、2024年度に4製品、2025年度に6製品の健康食品から、ED治療薬の成分などの医薬品成分が見つかりました(東京都, 2025/2026)。いずれも違反の疑いが強い製品を選んで買い上げた結果なので、市場全体の割合を表す数字ではないですが、同じ種類の製品で毎年のように見つかっている点は重く受け止める必要があります。
表示にない医薬品成分が危ない理由
健康食品に医薬品成分が入っていると、その製品は法律上「承認を受けていない医薬品」の扱いになります。品質、有効性、安全性のどれも国に確かめられていない製品です(厚生労働省, 2026)。危険は主に次の3つです。
- 中身が分からない:成分がラベルに書かれていないため、飲む人も医師も、何をどれだけ飲んだか判断できない
- 量が決まっていない:正規の薬の何倍もの量が入っていたり、複数の成分が組み合わされていたりすることがある(厚生労働省eJIM, 2025)
- 同じ名前でも中身が同じとは限らない:同じ名称の製品でも成分や量が違う場合がある(厚生労働省, 2026)
厚生労働省は、医薬品成分が検出された製品を持っている人にすぐ使うのをやめること、健康被害が疑われる場合は速やかに医療機関を受診することを呼びかけています。あわせて、調査結果に出てきた成分を目当てに、同じ名称の製品を買わないよう求めています(厚生労働省, 2026)。
また、正規の医薬品で重い副作用が出た場合に使える公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度)は、いわゆる健康食品や海外製の医薬品による健康被害には使えないです(厚生労働省, 2026)。
特に危険な薬との飲み合わせ
最も注意が必要なのは、狭心症などで使う「硝酸薬」(舌の下に入れる薬、飲み薬、貼り薬など)を使っている人です。ED治療薬の成分と硝酸薬が重なると、血圧が下がりすぎるおそれがあります(国立健康・栄養研究所, 2021)。米国国立衛生研究所の資料でも、EDを目的にしたサプリメントに混ざった医薬品成分が硝酸薬と作用し合い、危険な血圧の低下を招くおそれがあると説明されています。糖尿病、高血圧、脂質異常症、心臓の病気がある人は硝酸薬を使っていることが多く、同時にEDの悩みを抱えやすいため、特に注意が必要です(厚生労働省eJIM, 2025)。
ラベルに医薬品成分が書かれていない以上、「自分の薬とは飲み合わせても大丈夫」と本人が判断することはできないです。医薬品成分が混ざっていない製品でも、次のような注意点が報告されています。
- 高麗人参:血糖値に影響するとの報告があり、血をかたまりにくくする薬への影響は研究によって結果が分かれている(厚生労働省eJIM, 2021)
- L-アルギニン:心筋梗塞を起こした人を対象にした試験で、飲んだ群で亡くなる人が多く、試験が打ち切られた(Schulmanほか, 2006)
成分ごとの研究は、別の記事で詳しく説明しています。
硝酸薬を使っている人、心臓の病気で治療中の人は、強壮をうたう健康食品を自己判断で飲まないようにしましょう。飲んでいる健康食品があれば、商品のパッケージかお薬手帳のメモを、医師と薬剤師に見せましょう。
個人輸入の危険
海外の通販サイトから自分で取り寄せる「個人輸入」は手軽ですが、危険も伴います。厚生労働省の「あやしいヤクブツ連絡ネット」は、次の点を注意しています。
- 海外では食品やサプリメントとして売られていても、医薬品成分が入っていたり、医薬品のような効能をうたっていたりするものは、日本では医薬品に当たる場合がある
- 医薬品の個人輸入は、自分で使う場合に限られ、ほかの人に売ったり譲ったりすることは認められていない
- 個人輸入やインターネットで買った医薬品などで、健康被害が報告されている
先に紹介した国の調査も、運営者の所在地が海外や不明のサイトを対象にしたものです。インターネットで買ったED治療薬の偽造品の問題は、別の記事で詳しく説明しています。
危ない製品の目印
米国食品医薬品局(FDA)は、性機能向けの製品のうち、次のような特徴のあるものに注意するよう呼びかけています(厚生労働省eJIM, 2025)。
- 短い時間(30〜40分以内)で結果が出ると約束している
- 処方薬の代わりになると宣伝している
- 1回分ずつ小分けにして売られている
- 迷惑メールや、頼んでいないメールで宣伝されている
- ラベルが主に外国語で書かれている
- 医薬品をまねた使い方や注意書きがついている
日本の法律では、健康食品が病気の治療や予防、体の働きを全体的に高めることをうたうこと自体が認められていないです(東京都保健医療局, 2021)。「飲めばすぐ」「薬と同じ」のような広告は、それだけで避ける理由になります。表示のルールは、別の記事で詳しく説明しています。
体調が悪くなったときの受診先と相談先
厚生労働省のパンフレットは、健康食品を使うときはふだんから何をいつ飲んだかメモをとり、体調に異常が出たらすぐに飲むのをやめて保健所に相談するよう勧めています(厚生労働省「健康食品の正しい利用法」)。
- すぐに飲むのをやめる
- 症状があれば、製品(パッケージや残りの錠剤)とメモを持って医療機関を受診する
- 健康食品による体調不良は、住んでいる地域の保健所に相談する
- 返品や解約など、買ったことに関するトラブルは、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話する
- 違法が疑われる販売サイトを見つけたら、厚生労働省の「あやしいヤクブツ連絡ネット」から通報する
消費者ホットライン188は、郵便番号などを入力すると、近くの市区町村や都道府県の消費生活センターにつないでくれる全国共通の番号です。相談は無料ですが、つながった時点から通話料がかかります(消費者庁)。あやしいヤクブツ連絡ネットにはコールセンター(03-5542-1865、月・水・金の祝日を除く9時30分〜16時)もあります(厚生労働省)。
受診の目安:強壮系の健康食品を飲んだあとに、胸の痛み、強い動悸、立ちくらみや気が遠くなる感じ、急な目の見え方の異常、勃起が長時間おさまらないといった症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。意識がもうろうとする、強い胸の痛みが続く場合は、ためらわずに救急車を呼びましょう。受診の際は、飲んだ製品を持参しましょう。
最終確認日:2026年9月30日
参考にした資料
- 国立健康・栄養研究所「厚生労働省が令和元年度『インターネット販売製品の買上調査』結果を公表」(2021年4月)
- 厚生労働省「令和5年度『インターネット販売製品の買上調査』の結果について」
- 厚生労働省「令和6年度『インターネット販売製品の買上調査』の結果について」(2026年3月31日)
- 厚生労働省「令和6年度『インターネット販売製品の買上調査』の結果について」別添
- 厚生労働省「令和3年度『無承認無許可医薬品等買上調査』の結果について」
- 東京都「令和6年度健康食品試買調査結果」(2025年3月25日)
- 東京都「令和7年度健康食品試買調査結果」(2026年3月23日)
- 国立健康・栄養研究所「厚生労働省と東京都が医薬品成分を含む製品に注意喚起」(2021年7月)
- 厚生労働省eJIM「勃起不全(ED)/性機能改善」(2025年6月公開)
- 厚生労働省eJIM「朝鮮ニンジン(高麗人参、オタネニンジン)」(2021年3月公開)
- Schulman SP, et al. L-Arginine Therapy in Acute Myocardial Infarction: The VINTAGE MI Randomized Clinical Trial. JAMA(2006年)
- 厚生労働省 あやしいヤクブツ連絡ネット「リスクが潜む個人輸入」
- 厚生労働省 あやしいヤクブツ連絡ネット「医薬品等の個人輸入について」
- 東京都保健医療局「医薬品的な効能効果について」(2021年)
- 厚生労働省「健康食品の正しい利用法」
- 消費者庁「消費者ホットライン」