EDとは?どれくらいの人にあるか・原因・受診の目安
勃起がうまくいかない状態が続くことを、医学では「勃起障害(ED)」と呼びます。年齢のせいとあきらめたり、恥ずかしくて誰にも相談できなかったりする人が多い悩みですが、実は珍しいことではないです。この記事では、EDの意味、日本でどれくらいの人にあるか、原因、そして体の病気との関係を、学会の診療ガイドラインと調査をもとに説明します。
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- 医学的な「ED」の意味と、たまにうまくいかないこととの違い
- 日本の全国調査で分かった、EDのある人の割合
- 血管・神経・ホルモン・心・薬など、原因の主な種類
- EDが心臓や血管の病気のサインになることがある理由と、受診先
EDの意味:「たまに」と「続く」の違い
日本性機能学会と日本泌尿器科学会のガイドラインでは、EDを「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」と定めています(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。
ポイントは「続く、またはくり返す」ことです。疲れている日やお酒を飲んだ日にうまくいかないのは、多くの人に起こることで、それだけでEDとは言わないです。一方で、同じ悩みが何度も続いて本人が困っている場合は、治療の対象になりうる状態です。
日本でどれくらいの人にあるか
日本性機能学会は2023年、20〜79歳の男性6,228人にインターネットで調査を行いました。勃起の硬さを5段階で答える質問票で「挿入に十分な硬さがない」と答えた人は30.9%で、人口に当てはめると約1,400万人と推計されています。1998年の全国調査では約1,130万人と推計されていました(Tsujimuraほか, World Journal of Men's Health, 2024)。
年代別では年齢とともに増える傾向がありましたが、20代は30代・40代より高く、20〜24歳で26.6%、50〜54歳で27.8%とほぼ同じ水準でした(同, 2024)。ただし、ネット調査のため回答者に偏りがある可能性を、研究者自身が注意点として挙げています。なお、自分からEDで困っていると答えた人は13.0%にとどまり、悩んでいても自覚や相談につながっていない人が多いと考えられます。
海外を含む研究のまとめでは、有病率はおおむね40歳代で2〜15%、60歳代で20〜40%、70歳以上で50〜100%と推定されています。調べ方や定義が研究ごとに違うため、幅が大きくなっています(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。
勃起のしくみと、体の原因
勃起は、性的な刺激が神経を通って伝わり、陰茎の中の血管が広がって血液がたまることで起こります。水道にたとえると、神経が「蛇口をひねる合図」、血管が「水道管」、ホルモンが「設備を保つ管理人」の役割です。どこかに問題があると、うまく働かなくなります。
ガイドラインでは、原因によってEDを3つに分けています(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。
- 体に原因がある(器質性):血管の動脈硬化、糖尿病による神経や血管の傷み、脳や脊髄の病気、骨盤内の手術の影響など
- 心に原因がある(心因性):ストレス、不安、うつ、パートナーとの関係など
- 両方が重なる(混合性):実際にはこの形が多いとされる
男性ホルモン(テストステロン)とEDの関係については、一定の見解がまだないです。ホルモンが明らかに低い「性腺機能低下症」の人に限って、補う治療で改善するとされています(同, 2018)。
心の要因と、薬の副作用
日本の40〜64歳の男性1,419人を調べた研究では、うつ症状がある人はEDになりやすい傾向がありました。海外の追跡調査では、うつがEDを招き、EDがうつを招くという両方向の関係も示されています(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。「一度うまくいかなかった不安が、次の失敗を呼ぶ」という悪循環もよく知られています。
薬の副作用で起こるEDもあります。ガイドラインでは、一部の血圧の薬、一部の抗うつ薬、前立腺肥大症や薄毛の治療に使う一部の薬(5α還元酵素阻害薬)などが挙げられています(同, 2018)。
薬の副作用が気になっても、自己判断で薬をやめるのはやめましょう。持病が悪化するおそれがあります。処方した医師に相談すれば、種類の変更などを検討してもらえる場合があります。
EDが心臓や血管の病気のサインになることがある
EDは、心臓の病気と同じ「血管の老化(動脈硬化)」を土台に起こることがあります。陰茎の血管は心臓の血管より細いため、同じ変化が先に症状として出やすいと考えられています。
- 欧米の7つの追跡研究(45,558人)をまとめた分析では、EDがある人はない人に比べ、心臓や血管の病気の発生リスクが約1.47倍でした
- 12の追跡研究(36,744人)の分析でも、EDは冠動脈の病気(狭心症や心筋梗塞など)の独立したサインであることが示されています
- 冠動脈の病気が見つかる2〜3年前にEDを自覚していることが多いと報告されています
- EDで受診した人の18%に、それまで気づいていなかった高血圧が見つかったという報告があります
(いずれもED診療ガイドライン第3版, 2018 に収載された研究)
つまり、EDの相談は、心臓や血管の病気を早めに見つけるきっかけにもなります。EDのある人がみな心臓病になるという意味ではないですが、「年のせい」で片づけず、体を点検する合図として受け止めましょう。糖尿病や高血圧、喫煙などとの関係は、別の記事で詳しく説明しています。
受診の目安と、泌尿器科で行うこと
EDの相談先は、主に泌尿器科です。診察では、問診票で勃起の状態を確かめ、持病・飲んでいる薬・喫煙や飲酒・運動の習慣を聞き、血圧や体重などを調べます。外性器に変形やしこりがないかの確認や、50歳以上では前立腺の触診も望ましいとされています。1年以内の検査結果がなければ、尿や血糖の検査を行うことがあります(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。実際にどこまで診察するかは医療機関によって異なるため、不安な点は受付や医師に確かめておきましょう。
受診の目安:次のような場合は、早めに泌尿器科に相談しましょう。
- 勃起の悩みが数か月続いている、または回数を重ねるごとに悪くなっている
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症があり、健診で数値を指摘されている
- 胸の痛みや息切れ、足のしびれなど、ほかの体の症状もある
- 新しい薬を飲み始めてから悩みが出てきた
胸の痛みや強い息苦しさがある場合は、EDの相談より先に、すぐに医療機関を受診しましょう。
「たまにうまくいかないけれど気にしていない」場合は、急いで受診する必要はないです。本人やパートナーが困っているかどうかが、治療を考えるときの大事な物差しになります。治療の選び方は、別の記事で詳しく説明しています。
なお、2025年9月に両学会から「男性性機能障害診療ガイドライン2025年版」が出版されています。この記事の数字は、本文を確認できた2018年版の内容と、2024年に発表された全国調査の論文にもとづいています。
最終確認日:2026年9月30日